ワードワーク WORD WORK

cross talk

西村製作代表取締役社長西村憲行×深田が考える
ニッチトップ企業のブランディング

cross talk 経営者と語るブランド戦略
人材の確保を起点にスタート。

深田:弊社と出会う前から、西村製作はそうめんなど乾麺の生産現場では既に名の知れた会社で、乾麺の自動裁断機などではシェアナンバーワンと言っても差し支えのない老舗企業です。そのようなニッチトップ企業である御社がブランディングに取り組まれたきっかけはどのようなところにあったんですか?

西村:会社の印象を変えたい!この一言に尽きますね。特に人材の獲得において、会社の印象を変えなアカンと日頃から思ってました。うちは、そうめんなどの生産現場の省力化機器を製造してますが、人様の会社のことばっかり一生懸命に考えて、自社のPRとか求職者からどう見られているかなどあまり考えてなかった。でも、採用活動をするなかでこのままではアカンと。

深田:確かに、以前のシンボルマークやロゴタイプでは、御社は非常にテクニカルでアイデアのある製品を開発されているのに、それが伝わってこなかった。企業の現状とシンボルマークから受ける印象が乖離してました。先代から継承されてきた社名やマークをとても大事にされていたのは伝わってきましたが、外の人や若手の人材には旧態依然とした会社に見えていたと思います。

西村:絶対そう(笑)

cross talk 経営者と語るブランド戦略
代表者の決意が波及する。

深田:シンボルマークや企業ロゴタイプを変えると受け手の印象は変わるでしょう。しかしそれだけでは単なる化粧直しであって、ブランディングの本質ではない。御社は乾麺製造現場におけるリーディングカンパニーであり、これからも現場の高齢化や人手不足に一石を投じる可能性を秘めた企業である。それを受け手にしっかりと印象付けることが大事だと考えました。同時に、そういう使命を持った会社であると社員さんにも認識して欲しかった。

西村:そういうふうに、どの方向に会社の印象を作っていけばいいかをはっきり言ってもらえるのがありがたかった。自分ではなかなかまとまらへんからね。提案されたロゴを決めていくプロセスでは中核となる社員に参加してもらったけど、最初はみんななんか引いた感じで(笑)、意見もあまり出なかった。でもトップ(社長)が何かしようとしているのが伝わっただけでもいいんちゃうかな。

深田:結局、ブランディングはトップダウンでないとできないんですね。特に中小零細企業はもう絶対そうです。やろうと思えばトップが全て決めてしまえるんですけど、それじゃ意味がない。今おっしゃったように、そういうマークやロゴの選定の場に社員さんに参画していただくことで、トップが何かを変えようとしてる、あるいはこの会社が変わろうとしているっていう空気といいますか、意志みたいなところを社員さんに感じてもらえたら、僕は狙い通りですね。最終的には社長に決定していただこうと思っていましたけど。

西村:これまでの社のイメージカラーは大体、ブルー、それと黄色ね。でも最終的に選んだのは赤と黒のマーク。それまでの色と決別するっていうのはちょっとした冒険というか、もう戻れないからね。

深田:代表者の決意ですね。シンボルマークやロゴタイプあるいはコーポレートカラーを変えるっていうのは、確かに企業の印象を変えることに繋がるんですけど、やっぱりブランディングの本筋というのはあくまでもそのマークを背負う人にあるというふうに思ってます。働く方の意識や行動ですね。今回はマークだけでなく企業スローガン(ステートメント)を作ったりクレド(行動指針)も作られましたが、これを毎月復唱されていると聞いて、うれしかったです。

西村:せっかくクレドを作ったんやから、活用しよう、復唱しようって専務が皆に呼び掛けた。クレドを作ったのは僕やけど、現場からそういう声が上がったのは良かった。

深田:そのように意識の部分もブランディングという一連の流れ、動きの中で変えていかれていることは、非常に意味のある事です。御社が真にニッチトップの企業であるために、外見だけでなくそこで働く社員さんにもやはり事業の価値を体現して頂きたい。それがこれからもニッチトップを継続し、企業を強化していく背骨になると思います。

cross talk 経営者と語るブランド戦略
リーディング企業の使命を果たす。

西村:我々は、乾麺の製造現場で必要とされているし、これから新製品もどんどん開発していかないと、この業界が弱ってしまう。そうめんについて言えば、高齢化の中で全国的に生産量がずっと減ってきてるから、省力化の製品は絶対必要。

深田:そうですね。

西村:我々のような機械屋は、やっぱり機械に携わってないとアカンと思う。手延そうめんのような伝統産業を主要なマーケットに考えたら、機械屋同士、同業者でコラボして、この業界の標準品となるような製品を作っていきたい。協業っていうか、自分とこだけじゃなくて、うちの得意なところと他社の得意なところを合わせて一つの商品を作りましょうと。そういう取り組みも、業界全体に必要ちゃうかな。

深田:人材の採用をきっかけにブランディングに取り組まれてきましたが、ニッチトップ企業としての使命を果たす上でも、その旗印となる企業ロゴ、そして「人のための知恵で、人のための機械を創造する」という企業スローガンが生きてくるはずです。将来的には「人のための知恵で、人のための市場を創造する」ということになるかもしれませんね。

西村:うまいことまとめましたね(笑)。

西村製作株式会社

1966年創業。地元である兵庫県たつの市で鋳造用木型をはじめ、大手弱電会社の治工具、及び専用機の設計製作を行う。また地場産業である「そうめん作り」の現場改善にも早くから注力し、重労働の軽減や人手不足をフォローする省力化製品なども手がける。独自視点のユニークな製品は全国の乾麺製造現場で注目されている。